ひまし油は本当に効くのか――おへそ実験中の私が、正直に調べてみた
- 円山茶館
- 6月25日
- 読了時間: 6分

こんにちは。 最近、SNSを開くと、しばしば目に入るのが「ひまし油(キャスターオイル)健康法」です。
おへそに塗ると消化が整い、生理痛がやわらぎ、ホルモンバランスが調い、睡眠まで改善する――。
10も20も効能が並ぶ投稿を見ていると、つい心が動きます。
実は私自身、この健康法には、実はかなり好意と興味を持っています。
そして正直に告白すると、すでに自分のおへそで「実験」を始めています。
ただ――先に結論を言ってしまうと、今のところ何の変化も感じていません。
まだ3日目ですから、当たり前といえば当たり前なのですが。
そんな宙ぶらりんの私だからこそ、舞い上がりも頭ごなしの否定もせず、できるだけ中立な目で、「科学は何と言っているのか」を調べてみました。
査読を通った論文だけを頼りに、効くところと、まだ何とも言えないところを、正直に切り分けてみます。
効くと言える部分は、たしかにある
まず安心してください。
ひまし油は「ただの民間伝承」ではありません。
その約9割を占めるリシノール酸という珍しい脂肪酸に、れっきとした薬理作用が確認されています。
動物実験では、リシノール酸を皮膚に塗ると、唐辛子の辛味成分カプサイシンと似たしくみで炎症と腫れを抑えました。
痛みのセンサーである神経の受容体にはたらきかけて、いわゆる「神経にかかわる炎症」を鎮めるのです。
「炎症をやわらげる」「痛みをやわらげる」という昔ながらの言い伝えには、ちゃんと裏づけがあったわけです。
もうひとつ確実なのが、飲んだときの下剤作用です。
これは結構強力で、米国のFDA(食品医薬品局)も、刺激性の下剤として認めています。
ただし、作用が強い分、腹痛や脱水を招くことがあり、特に妊娠中は子宮を収縮させる危険があるので絶対に避けねばなりません。
「自然のものだから安心」とは、こと飲用に関しては言えないのです。
おへそ・パックの「全身に効く」は、まだ証明されていない
問題は、SNSで人気の「おへそ塗り」や「ひまし油パック(湿布)」のほうです。
パックと便秘については、トルコの高齢者35人を対象にした臨床試験がひとつだけあります。
結果は実に正直で、便の回数や量は増えなかったけれど、便のかたさ・いきみ・残便感はやわらいだ、というもの。
「出やすくはなったが、出る回数は変わらない」
被験者の8割が10年来の便秘という偏った集団で、人数も少なく、評価は「弱い証拠」にとどまります。
そして肝心の「おへそ塗り」です。
「おへそに塗ると全身の不調が整う」という発想は、もともとアーユルヴェーダ(インドの伝統医学)の枠組みで、現代医学の論文で確かめられたものではありません。
「へそが全身の腺とつながっている」という説明も、解剖学的には正確とは言えません。
へその緒は生まれた瞬間に閉じてしまい、栄養を運ぶ管としては、もう働いていないからです。
決め手は「皮膚からどれだけ吸収されるか」。
動物実験では、ひまし油の経皮吸収はごくわずかで、塗っただけでは下剤効果すら出ませんでした。
つまり、「おへそから塗って、ホルモンや内臓に届く」という道すじ自体に、生理学的な裏づけが乏しいのです。
塗って心地よい、温めて血のめぐりが良くなる――そこまでは認めてよい。
ですが、「10の全身効果」を支える論文は、探しても見つかりませんでした。
あるはずだと思って探して、なかった。
ないものは、ない。
これは正直に書いておきます。
エドガー・ケイシーという人をどう見るか
ひまし油パックの「元祖」としてよく登場するのが、エドガー・ケイシー(1877–1945)です。
催眠状態で病人の治療法を口述した、「眠れる予言者」と呼ばれた人物で、ひまし油パックは彼が最も愛用した処方でした。
評価ははっきり2つに割れます。
肯定する人は、栄養学が確立する以前に「果物と野菜を多く、揚げ物と白い砂糖を控えめに」と説いた先見性をたたえます。
その一方で、懐疑的な立場からは「いかさま師」とまで言われてきました。
「カリフォルニアが海に沈む」
など、数々の予言がことごとく外れたことが大きいのでしょう。
彼の治療法は、厳密な比較試験を経たものではなく、その権威は科学的な証明ではなく、本人のカリスマと信奉者の証言に支えられている――
そう見るのが公平でしょう。
皮肉なことに、ひまし油パックが現代まで生き残ったのは、ケイシーが正しかったからではなく、その一成分であるリシノール酸に、たまたま本物の抗炎症作用があったから。
順序が、逆だったのです。
それでも私は、おへそに塗っている
ここまで冷静に書いておいて何ですが、私はやっぱり実験を続けるつもりです。
科学が「証明されていない」と言うことと、「効かない」と断言することは、まるで違います。
証明の網にかからない領域に、まだ何かが眠っている可能性は否定できません。
それと、私が妊娠を経験していることも大きいと思います。
妊娠中、私の食べたものから私が吸った酸素までが、胎児である息子にどのように届いたのか。
それはひとえに「へその緒」を通って絶え間なく届いたのです。 それも、彼のカラダ全身に、隅々までしっかりと。
その事実を改めて実感として想うに、「へその緒の跡、つまりおへその、カラダ側につながっていた全身へ広がる道は、へその緒を切られた後も残っているのではないだろうか」と、素直に想像できるのです。
科学的な根拠はまだ見つかっていないけれど、おへそには隠された役割が、母親から切り離された後もあるように感じるのです。
それは、昔「盲腸にはなんの役割もないから切って良し」という通説だったのが、現代では「盲腸には腸内細菌をコントロールする役割があるからできるだけ取らないほうがいい」に変わったように。
ただ、ひまし油が「万病に効く」は言いすぎだし、飲用や妊娠中の使用には本物のリスクがあります。
私が今やっているのは、あくまで自分ひとりの効果も保証されていない小さな実験です。
3日目の今日も変化はゼロです。
もしも続けて何か感じることがあれば、良いことも、何もなかったことも、このブログで正直にご報告します。
期待しすぎず、頭から否定もせず。
伝統と科学が重なる、その一点だけを、これからも誠実に見つめていきたいと思います。
※本記事は健康法に関する情報を中立的に整理したもので、特定の効果を保証するものではありません。飲用、妊娠中の使用、持病がある場合の使用については、必ずかかりつけの医師にご相談ください。
主な参考文献
Vieira C, et al. "Effect of ricinoleic acid in acute and subchronic experimental models of inflammation." Mediators of Inflammation, 9(5): 223–228, 2000年, Hindawi.
Vieira C, et al. "Pro- and anti-inflammatory actions of ricinoleic acid." Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology, 364(2): 87–95, 2001年, Springer.
Arslan GG, Eşer İ. "An examination of the effect of castor oil packs on constipation in the elderly." Complementary Therapies in Clinical Practice, 17(1): 58–62, 2011年, Elsevier.
"Use of Castor Oil in Dermatology: A Narrative Review." PMC12978418, NCBI, 2025年.
"Preliminary Evidence of an Anxiolytic-like Effect of Castor Oil and Ricinoleic Acid." Nutrients, 16(10): 1527, 2024年, MDPI.
McGarey, William A. Edgar Cayce and the Palma Christi. A.R.E. Press, Virginia Beach.
"Edgar Cayce." Psi Encyclopedia, Society for Psychical Research.
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